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GPS,衛星通信

  ・2010年9月11日H-IIAロケット18号機によって打ち上げられた「みちびき」、9月27日、日本上空を通る中心経度約135度の準天頂軌道に投入されたと報道されてます。GPSの用途が拡大されるといいます。実用化まで発展するでしょうか、感激です。
 楽しいみちびきサイトも用意されているようです。関係者たちの待ちに待った様子、力のこもった、国力を示すようなサイトです。せっかくなので遊んでみます。そういえばパシフィコ横浜でみちびきの模型が展示されていた時、3D眼鏡を配布してました。それがあると、このサイトはもっと楽しくなりそうです、捨てなければよかった、と思いながら。
 また今回の準天頂衛星システムの軌道はどうなっているのでしょうか。ノーラッド(NORAD)の軌道データを元に、「みちびき」の軌道を描いてみます。

・2009年9月18日、国際宇宙ステーションに物質を運ぶ無人補給機[HTV]が、ステーションに接続された。[HTV]はH2Bロケットで打ち上げられ、ステーションから10mの位置に接近。スペースシャトルに滞在中の宇宙飛行士のロボットアーム操作によって、ステーションの下部にある接続口につながれた。人類は宇宙空間でも長期間滞在できるようになりました。すごい進歩ですね。
・2009年2月26日の新聞には、10年ぶりの宇宙飛行士候補、大西拓哉さん、油井亀美也さん記事が大きく載ってます。嬉しいニュースです。楽しくなります。

2009年、1月13日の新聞に三菱重工、韓国衛星打ち上げ受注という記事があります、また温室効果ガスを監視する国の衛星「いぶき」を乗せたH2Aロケットが1月21日に飛び立とうとしています。学生や中小企業が作った6こ(最終は7個)の衛星も「いぶき」に相乗りするようで, 宇宙産業は拡大するのか、見ていきましょう。
その後の「いぶき」の状況は こちらで報告されているようです。そう、富士通テクノロジーホール(川崎工場)には「いぶき」の模型が展示されていました。地球全体の温室効果ガスを4日間で測定できると説明員の方がおっしゃっていました。(2009.4.5)

  ・2008年2月号のトラ技、GPS特集、内容が全くわかりませんでした。それで読むきっかけになったのですが、最初はGPSモジュールから調査しようと思いました。でも、まず手元に古い本(参考文献(1)(11))がありましたので、いくつかのWEBサイトを参照しながら衛星通信のうち興味のもてるところを読んでいきます。古い内容のままかも知れませんが、調べながら新しい情報に更新したいと思います。宇宙まではいかなくても、空に夢が広がるような気持ちで、衛星軌道を描きながら進んでいきたいと思います。
完成まで時間がかかりそうです。
国際宇宙ステーション 三菱技術館に展示されている国際宇宙ステーションの模型(2009.4.3)
1、衛星軌道を描いてみる

(1)静止衛星
  公転周期が地球の自転周期と等しい円軌道で、しかもその軌道面が赤道面内にあるものだけが静止(衛星)軌道である。

(2)GPS衛星
各衛星は高度20,200km、軌道傾斜角55度、周期12時間の準同期軌道上にあるという説明がWikipedia GPS衛星 にあります。

(3)軌道変換
  衛星を待機軌道から、最終の運用軌道へ軌道変換する。第一段階は低軌道への投入、第二段階はこの待機軌道から希望の軌道(運用軌道)へ変換する。

(4)ケプラーの法則と軌道面内における軌道パラメータ
ケプラーの法則
・惑星(衛星)の軌道は、太陽を1つの焦点とする楕円軌道である。
・惑星(衛星)と太陽を結ぶ動径は、等しい時間に等しい面積を描く。
・惑星の公転周期の2乗は,焦点からの平均距離の3乗に比例する。

軌道平面の表し方
ケプラーの方程式
 M=E-e sinE
 
 平均近点角M=n(t-τ):軌道上のどこにいるかを表わす。
 e:離心率、  E:離心近点角
  なお円軌道の場合はe=0になりM=E=ν
   M-Mo=n(t-to)と表されることもある。
 n:平均運動(衛星の角速度 rev/day)=2π/P
 P=2π√(a^3/μ)
 ν:真近点角
 動半径r=a(1-e cosE)

   このあたりは Wikipedia 人工衛星の軌道, Wikipedia 人工衛星の軌道要素に図を用いた説明がされてました。
(5)宇宙空間における衛星の軌道―― ケプラーの6軌道要素
楕円軌道の大きさと形およびその地球に対する方向を完全に決めるためには、5個のパラメータが必要である。さらに、衛星のその軌道上の位置を確定するために、6番目のパラメータである時刻基準が必要である。
a:(軌道)の長半径--軌道の大きさを表す。
e:(軌道)の離心率--楕円のつぶれ具合を表す。
     e=sqrt(1-(b^2)/(a^2))
     b:短半径
i:(軌道)の傾斜角--軌道面と赤道面のなす角
Ω:昇交点赤径--軌道面と赤道面の交点のうち、衛星が赤道面を南側から北側に通過する点の半径
ω:近地点引数--軌道面内の楕円の長軸の向き
τ:近地点通過基準時刻

このような関係があるとき 計算の仕方は参考文献(5)に詳しく紹介されています。
なお軌道要素は通称ノーラッド(NORAD)北アメリカ航空宇宙防衛司令部CelesTrakなどで公開されているようです。衛星位置の測定にはレーダーを使っているとのことです。FO-29(ふじ3号)もありました。
古いデータも残ってます、最新データは、currentを選択します。すなわちこちらのほうです。
例えばふじ3号のTLE(Tow Line Element)データです
FO-29
1 24278U 96046B 04366.77616931 -.00000035 00000-0 27994-5 0 8621
2 24278 98.5715 72.7603 0350000 249.9546 106.3601 13.52906575413550

この読み方はこちらなどに紹介されてます。

アマチュア衛星FO-29(ふじ3号)
高度   :近地点高度 799km、 遠地点高度 1320km
周期   :106分
軌道傾斜角:99度
の衛星ですが、 2008.9.19に温度異常が発生しているようです。13年の運用に耐えるのですから、素晴らしいと思いますが、残念です。通常の構体温度は5〜6℃だそうですが、±12℃まで1分ぐらいで変化する、暴走しているようで、運用が危ぶまれます。

また参考文献(10) 軌道情報提供サービス(jaxa)で衛星軌道を計算してくれます。見ているうちに施設見学に出かけようかなと思い始めました。
<ふじ3号の軌道を先の軌道情報提供サービスでみてみる>
軌道情報作成を行ってみました。FO-29のTLE(Tow Line Element)データをこのサービスに入力して、csvファイルを出力してみます。下記はその一例です。

軌道生成期間 2009年02月11日05時00分00秒〜2009年02月12日05時00分00秒
Time(UTC)        Rx(Km)         Ry(Km)        Rz(Km)     Vx(Km/s)      Vy(Km/s)     Vz(Km/s)
2009/2/11 4:58	351.4548025	1726.010756	-7104.28129    3.342508547	-6.53271259   -1.18804523
2009/2/11 4:59	551.2427577	1331.136773	-7162.526961   3.315019583	-6.625805958  -0.752553122
2009/2/11 5:00	749.0116673	931.3895591	-7194.482854   3.275213534	-6.695068552  -0.31197433
こんな感じで、指定期間の計算をしてくれます。
さて、この座標系の種類はどちらなのでしょうか? 地心赤道直交座標 Xs、Ys、Zsだと思うのですが
WEBにはMean of 2000/Cartesianと説明されてました。地心赤道直交座標と同じようです。
座標系の詳しい説明は こちらにありました
これを図に表してみます。
  どうやって、描き方を考えてしまいましたが、簡単にOctaveまたはMatlabのプロット機能を使ってみます。簡単に表示できますので。plot3という関数があります。

  A=csvread('C:\SEFT_FO-29_83683.csv',1,1);
  plot3(A(:,1),A(:,2),A(:,3));
  axis([-10000 10000 -10000 10000 -10000 10000]);
  title("FO-29 Orbit")
  xlabel('x(km)')
  ylabel('y(km)')
  zlabel('z(km)')
  grid on;
を実行しますと、次の衛星軌道を表示できます。尚、SEFT_FO-29_83683.csvは先の、情報サービスで得たデータファイルです。
   plot3のスケーリングですが、OctaveではZ軸のスケーリングが自動ではありません。axis関数を使ってスケーリングをしています(Octave Ver3.2.4を使うとスケーリングは自動になってました)。 Matlabの場合は3軸とも自動スケーリングでした。まあ、とりあえず書くことが出来ました。座標系は右手座標系になります。地球の半径は赤道半径が6378.137km、極半径が6356.752kmで、図には書いてありませんので注意です。
 衛星軌道

 この図では軌道傾斜角:99度が読み取れませんので、z軸のスケールを変更して書き直してみますと次のようになり、極の近くを通る軌道が読み取れそうです。
 衛星軌道

   また、先のファイルに速度情報もありましたので、同じようにplotしてみました。
 位置情報と同じ形を描いて飛行しているようです。
 衛星軌道速度

   軌道傾斜角を読み取れるように、z軸のスケールを変更してプロットしてみます。
 衛星軌道速度

      速度をプロットするプログラムは、先のプログラムに次の行を追加します。  

 figure(2);
  plot3(A(:,4),A(:,5),A(:,6));
  axis([-10 10 -10 10 -10 10]);
  title("FO-29 Orbit Velocity")
  xlabel('Vx(km/s)')
  ylabel('Vy(km/s)')
  zlabel('Vz(km/s)')
  grid on;
 

みちびきの軌道を描く

 みちびきさんに国際標識番号がついて(NORAD)の「TLEフォーマット」が入手できるという記事を見かけましたので、先に説明した「ふじ3号」と同じように軌道を描いてみます。

NORADから「TLEフォーマット」を入手します。
QZS-1 (MICHIBIKI)
1 37158U 10045A 10280.51455780 -.00000202 00000-0 10000-3 0 260
2 37158 40.9541 194.6879 0753415 269.9694 231.2219 1.00271198 282
JAXAで軌道を計算してみます

衛星軌道作成
以下の条件で軌道暦を作成しました

衛星名   MICHIBIKI
軌道生成期間(UTC) 2010年10月09日01時00分00秒〜
2010年10月10日01時00分00秒
TLEデータ
1 37158U 10045A 10280.51455780 -.00000202 00000-0 10000-3 0 260
2 37158 40.9541 194.6879 0753415 269.9694 231.2219 1.00271198 282

同じくcsvファイルを出力してoctaveで描いてみます。
octaveのプログラムは「ふじ3号」で使用したものと同じです。

JAXAの報道によると
最終の軌道制御を9月27日6時28分から約50秒間にわたり実施しました。  その後の軌道計算により、中心経度約135度の所定の準天頂軌道に投入したことを確認しました。 決定値 遠地点高度 38,950km 近地点高度 32,618km 軌道傾斜角 41.0度 周期 23時間56分 ドリフト率 0.03度/日 (東方向)
 通常のGPS衛星は高度20,200km、軌道傾斜角55度、周期12時間の準同期軌道上にあると言われてます。通常のGPSと比べて、ざっと高度は2倍、周期は1/2(24時間)です。3機でコンステレーションを組んで日本の上級を飛び続けるというのですが、まだ一機なので、コンステレーションにはなりません。  経度を変えながら南北を往復し8の字を描く様子は、JAXAのサイトによくできたムービーが紹介されてます。
 今回画いた「みちびき」の軌道から8の字を想定するのは大変かも知れません。地球とみちびきは同期して回転していますから、導きが南北を往復するのはわかります。さらに地球表面の速度の関係などから、経度が変わりながら動くので8の文字になるといいます。

 みちびき衛星軌道

地球の半径は赤道半径が6378.137km、極半径が6356.752kmで、図には書いてありませんので注意です。

2、GPSコンステレーションを描く

GPS衛星は6個の軌道面に各々4基以上配置されている、ということで、GPSコンステレーションを書いてみましょう。
  GPSのTLE(Tow Line Element)データを通称ノーラッド(NORAD)北アメリカ航空宇宙防衛司令部CelesTrakより入手し、 軌道情報提供サービス(jaxa)で衛星軌道を計算してもらいます。そしてデータをOctaveでプロットしてみます。Octaveの使い方は先に説明したとおりです。
例えばGPS blockUAのうち、15基(GPS BUA-10〜24)のデータをダウンロードして描いてみました。見た目ではコンスタレーションがそろって無いように見えますが、3D表示が分かりづらい点もあると思います。同じ軌道面でも、各衛星の軌道面は図のように異なっていますが、これでいいのでしょうか。
この図は、2009年3月1日の軌道を描いているということですが、この位置情報はレーダーで測定し、順次更新されているようです。
 GPS2A

   

 軌道面方向が分かりずらいので、Z軸の15000kmでカットして描いてみました

GPS2A

  軌道面をXY面に描画してみました。6個の軌道面は重なって半分の3個のように見えます。
GPS2A


 

巨大地球儀 日本科学未来館の巨大地球儀、表面のディスプレイが変化して動いているように見えます(2009.4.6)
 
3、スペースクラフト

 (1)構体系
 (2)姿勢制御系
 太陽電池を太陽方向にむける、通信アンテナを地球にむける、衛星全体の方向を決めるなど、どのようになっているのでしょうか、気になるところです。
 参考文献(1)(11)を見てみますと
 ・衛星への外乱には太陽からの放射圧、地磁気トルクなどがある。それで次の2つが用いられているようです。共通点はスピン機構(回転バランサー)がついていることです。
 こちらにも詳しい説明がありました。
 スピン安定型衛星
 ”コマ”のような回転体は外力が加わっても、角運動量保存の法則によって回転軸の方向が容易に変わらない性質がある。衛星を  扁平なドラム構造とし、スピン軸周りに50rpm前後の速度で回転させる。衛星全体が回転しますので通信アンテナも制御しないと、アンテナに指向性を持たせることが出来ませんね。
 
 このときに、スピン軸は宇宙空間で一定方向を向くのですが、どちらを向くのでしょうか?
 スピン衛星は軌道面に直角なスピン軸を持ち、(次に説明する)三軸衛星はヨー軸(地球を向いた軸をヨー(Yaw: Z))が常に地球を向くように制御され、ロール方向(進行方向をロール(Roll:X)軸)に飛行すると記されています。
   では、       
   三軸(ボディ)安定型衛星
 衛星内部に大型の慣性円盤(ノーメンタム・ホイール)をおきます。それをピッチ軸周りに高速に回転させ、その角運動量によって衛星の姿勢を一定方向に保持させます。衛星自体は回転しないので、大型衛星に用いられているそうです。姿勢安定度は0.1度以上まで高められる(このデータは古いです)ので、高利得アンテナを用いることが出来ます。     
 (3)電源系
 通信容量を大きくする為、使われている太陽電池は1KW以上が使われています。最近は・・・
 (4)熱制御系
 (5)推進系
 こちらには、計算問題が付いていますが、もっと増やしてほしいところです。
    
4、システムの信頼度と設計寿命

人工衛星の開発はどのように進められているのでしょうか。古い資料ですが一例によりますと、抜粋ですが
(1)概念設計、(信頼度目標/配分の設定)
(2)基本設計(信頼性解析/機能FMEA) (2)詳細設計(信頼度予測/ディレーティング解析/詳細FMEA/FTA)
(3)製作・試験
(4)運用
の手順が紹介されています。人工衛星に限らず、一般的な工業製品の開発手順のようです。
  では信頼度と寿命はどのように設計しているのでしょうか。
参考になりそうなサイトは
・JAXA信頼性情報システム
・三菱電機 人工衛星
・宇宙用単結晶シリコン太陽電池 シャープ
・SSCnote.ホ−ムペ−ジ: 宇宙技術者の心得
静止衛星の打ち上げから寿命後まで
   などでは燃料が尽きて寿命になるという説明がありますが、燃料以外の寿命についてはどうなのでしょうか。

5、無線回線

無線回線について調べてみます。
参考サイト
地上における人工衛星インフラの動向(世界)NEDO海外レポート

通信方式はどのようなものが使用されているのしょうか、一例を見てみます。
衛星の名前目的 設計寿命 通信設備、周波数、伝送レート、変調方式 打ち上げ
みちびき全国をほぼ100%カバーする高精度の測位サービス 寿命10年
(目標12年)
準天頂軌道
ヘリカル・アレーアンテナ、TTSアンテナ, レーザリフレクタ, Lバンドアンテナ, L1-SAIFアンテナ, CバンドTT&Cアンテナ 2010/9/11
約4トン
いぶき温室効果ガス(二酸化炭素とメタンの観測) 設計寿命5年 Sバンド,Xバンド  2009年1月23日
きずな超高速インターネット衛星 設計寿命 周波数上り27.5〜28.8GHz,下り17.7〜18.8GHz; 1.2Gbps/ビーム(非再生中継);155Mbps/ビーム(再生中継) 2008年2月23日,H-2Aロケット
ひまわり6号(TSAT-1R) 静止衛星気象観測、航空管制(航法および通信)5年(気象ミッション)10年(航空ミッション)     2005年2月26
だいち災害時の緊急観測、海氷、森林観測、地図作成 3年以上、5年目標 240Mbps (データ中継衛星経由)、120Mbps (直接送信モード)   2006年1月24日
通信(中継)             
放送 CS(ディジタル)        
放送 BS(ディジタル)        
GPS 衛星名          
衛星電話 衛星名       
IIS(きぼう日本実験棟) 国際宇宙ステーション  ICS(船内実験室)から地上: 50Mbps/約26GHz/QPSK ,地上からICSへ 3Mbps/約23GHz/BPSK  
アマチュア無線衛星名      

参考文献
(1)尾形陸奥雄訳「衛星通信システムエンジニアリング」啓学出版 1988年
(2)「GPSのしくみと応用製作」トランジスタ技術 2008年2月号
(3)
GPS衛星の軌道と衛星位置決定について
(4) 人工衛星の飛行経路・軌道の計算
(5)CALSAT32
(6)衛星の地表高度の計算アルゴリズ
(7) はまぎんこども宇宙科学館
(8)JavaScriptで人工衛星の位置を表示する
(9) 人工衛星の軌道要素 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(10) 軌道情報提供サービス(jaxa)
(11)西田昌弘「国際通信システムの基礎知識」ラテイス(株)1986年